ビタミンの解説
ビタミンA(脂溶性ビタミン)
名称 | ビタミンA Retinol レチノール |
体内での働き | 視覚、聴覚、味覚を正常に保つ。 皮膚や粘膜などの上皮細胞の正常化をはかる。 体の成長や発育の促進。 生殖作用の維持 |
解説 | ビタミンAは、視覚と深い係わりがあり、ロドプシンの主成分となっている。そのため、ビタミンAが欠乏すると夜盲症になることがある。また、上皮細胞を正常化したり、体の成長や発育の促進にも関与し、生殖機能にも作用する。ビタミンAは、体内にためておくことができるので、毎日補給する必要はない。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
夜盲症、ニキビ、知能障害、角膜乾燥症、成長停止、皮膚乾燥、抵抗力の低下 |
相乗作用を示す栄養素 | ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンE、カルシウム、リン、亜鉛 |
効果が期待される 症状、疾患 |
疲れ目、がん、花粉症 |
過剰症 | 食欲不振、頭痛、めまい、嘔吐、下痢、先天異常 |
日本の推奨量 | 750μgRE |
米国の対症摂取量 | 大量摂取の場合は、βカロテンでの摂取を推奨 |
安全最大摂取量 | アメリカ:3mg(10,000IU) 日本:1.5mg |
多く含まれる食品 | レバー、うなぎの蒲焼、小松菜、ニンジン、春菊、ぎんだら |
β‐カロテン(脂溶性ビタミン)
名称 | β‐カロテン Bete-carotene ベータカロテン |
体内での働き | 抗酸化作用で、活性酸素を除去し、細胞膜が傷つけられるのを防ぐ。がんの抑制や予防、心臓病の予防、コレステロール値の低減に効果がある。 |
解説 | プロビタミンAであるカロテンのうち、特に高い効力(抗酸化力)を持っている。体内でビタミンAが不足すると、必要な量だけビタミンAに変わるので、過剰症の心配はなく、ビタミンAの供給源として優れている。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
- |
相乗作用を示す栄養素 | ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンE、カルシウム、リン、亜鉛 |
効果が期待される 症状、疾患 |
疲れ目、がん、花粉症 |
過剰症 | 300mg/日以上摂取した場合、柑皮症(肌が黄色くなること)になる可能性がある。 |
日本の推奨量 | 9mgRE |
米国の対症摂取量 | 3 - 30mg |
安全最大摂取量 | アメリカ:設定なし(喫煙者は避ける) 日本:設定なし |
多く含まれる食品 | カボチャ、ニンジン、アシタバ、コマツナ、シソ、ホウレンソウ、マンゴー |
ビタミンE(脂溶性ビタミン)
名称 | ビタミンE Tocopherol トコフェロール トコトリエノール |
体内での働き | 抗酸化作用によって、過酸化脂質の生成を抑え、生体膜を活性酸素から守り、老化を防ぐ。善玉コレステロールを増すとともに、悪玉コレステロールを減らし、血行をよくする。黄体ホルモンや性ホルモンなどのホルモンの生成に関与し、生殖機能を正常に保つ。血栓を予防・溶解する。疲労を和らげる。虚血性心臓病、脳卒中のリスクを下げる。 |
解説 | ビタミンEは、4種類のトコフェロールと4種類のトコトリエノールと呼ばれる化合物の総称。抗酸化作用が強く、体内の過酸化脂質の生成を抑え、細胞が急激に老化するのを防ぐ。また、血液中の善玉コレステロールを増やしたり、中性脂肪を減らす働きがあるので、動脈硬化の予防にもなり血圧を下げる働きも期待できる。ホルモンの生成にも関与し、更年期障害の症状を軽減したり生殖機能を正常に保つ働きもある。ビタミンCと同時に摂取すると抗酸化作用が高まるという特徴がある。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
肩こり、生理痛、冷え性、シミ、ソバカス、溶血性貧血、不妊、流産、頭痛 |
相乗作用を示す栄養素 | ビタミンC、セレン、ビタミンA、CoQ-10、リポ酸 |
効果が期待される 症状、疾患 |
老化防止、肩こり |
過剰症 | 血液凝固障害 |
日本の推奨量 | 9mg(目安量) |
米国の対症摂取量 | 67 - 536mg |
安全最大摂取量 | アメリカ:1,000mg(1,600 IU) 日本:600mg |
多く含まれる食品 | あゆ、アーモンド、たらこ、ひまわり油、かぼちゃ、うなぎの蒲焼、豆乳、煎茶葉 |
ビタミンD(脂溶性ビタミン)
名称 | ビタミンD エルゴカルシフェロール(D2) コレカルシフェロール(D3) |
体内での働き | 植物由来のD2と、動物由来のD3があり、カルシウムとリンの代謝に重要な働きを持つ。小腸でのカルシウム、リンの吸収を高め、血液中の濃度を維持し、骨、歯への沈着を促進する。腎臓が、ミネラルを回収するのを助ける。筋肉の機能を向上させる。ビタミンAの吸収を助ける。免疫力の調整に関わっている。 |
解説 | ビタミンDは表皮において紫外線を浴びた上で、腎臓と肝臓で活性化されるので、単に摂取するだけでなくある程度日光を浴びることが必要(1日に30分ほど、顔と手に浴びれば十分)。大量の摂取は、組織にカルシウムを沈着させることがあるので注意。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
くる病、骨粗鬆症、動脈硬化症、骨軟化症 |
相乗作用を示す栄養素 | ビタミンA、ビタミンC、コリン、カルシウム、リン |
効果が期待される 症状、疾患 |
骨粗鬆症、くる病 |
過剰症 | 顔色が悪くなる、便秘、食欲不振、嘔吐、尿毒症 |
日本の推奨量 | 5μg(200 IU)(目安量) |
米国の対症摂取量 | 400 - 800IU |
安全最大摂取量 | アメリカ:60μg(2,400 IU) 日本:50μg |
多く含まれる食品 | サケ、カジキ、アンコウ、ムツ、きくらげ |
ビタミンK(脂溶性ビタミン)
名称 | ビタミンK フィトナジオン(K1) メナキノン(K2) |
体内での働き | 植物由来のK1と細菌が合成するK2がある。骨の代謝、骨のカルシウム沈着に働く。 血液の凝固に必要なタンパク質の合成に寄与する。 |
解説 | 怪我による大量出血や、内臓での出血を抑える。骨を丈夫にする。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
新生児出血症、頭蓋内出血、血がとまりにくい |
相乗作用を示す栄養素 | - |
効果が期待される 症状、疾患 |
新生児出血症、骨粗鬆症 |
過剰症 | 血圧低下、嘔吐、呼吸困難、溶血性貧血など |
日本の推奨量 | 75μg(目安量) |
米国の対症摂取量 | 安全最大摂取量 |
安全最大摂取量 | アメリカ:10mg 日本:30mg |
多く含まれる食品 | キャベツ、納豆、かぶ生葉、小松菜、にら、モロヘイヤ、ニンニク、大豆油、だいこんの葉 |
ビタミンC(水溶性ビタミン)
名称 | ビタミンC Ascorbic acid アスコルビン酸 |
体内での働き | コラーゲンの生成を促進。副腎等で多くのホルモンの合成に関与。活性酸素によって細菌やウイルスを撃退する免疫細胞の働きを助け、免疫力を高める。腸管での鉄、銅、カルシウムの吸収を高める。発癌物質ニトロソアミンの生成を抑制する。コレステロールの胆汁酸への代謝を促進、血中コレステロールを低下。細胞の老化を防ぐ抗酸化作用がある。また、ビタミンEをリサイクルする。インターフェロンの生産に関与。真皮でのメラニンの生産を抑制する。 |
解説 | 多くの動物は、体内でビタミンCを合成するが、ヒトを含む霊長類は合成できないため、食物からの摂取が必須。コラーゲンの生成を促進することにより、血管や筋肉、皮膚を健康に保つことに役立つと共に、傷の治癒を促進する。また、免疫力を高めることで、感染症の予防に役立つ。強力な抗酸化作用で、活性酸素によって細胞がダメージを受けることを防ぐ。さらに、コレステロールや中性脂肪のコントロールにも貢献している。シミやニキビ等の、肌の悩みにも役立つ。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
壊血病、風邪、シミ、ソバカス、肉体疲労 |
相乗作用を示す栄養素 | ビタミンE、バイオフラボノイド類、ヘスペリジン、ルチン、カルシウム、マグネシウム、CoQ-10、リポ酸 |
効果が期待される 症状、疾患 |
風邪、がん、シミ |
過剰症 | 腎臓疾患がある人は腎結石の心配がある。1日5,000mg以上の摂取で、人により軟便の可能性がある。 |
日本の推奨量 | 100mg |
米国の対症摂取量 | 500 - 5,000mg |
安全最大摂取量 | アメリカ:2,000mg 日本:設定なし |
多く含まれる食品 | アセロラ、イチゴ、オレンジ、柿、ブロッコリー、グアバ、レモン、グレープフルーツ、キーウィ |
ビタミンB1(水溶性ビタミン)
名称 | ビタミンB1 Thiamin チアミン |
体内での働き | TCA回路において、補酵素として働き、糖代謝を促進する。筋肉の疲労を防ぎ、疲労を癒す。脳を初めとする神経細胞、筋肉、心臓の働きを正常に保つ。食欲を正常に保ち、胃酸の分泌を高めて消化吸収を助ける。細胞の成長と修復を促す。 |
解説 | ミトコンドリアにおけるエネルギー生産に必須のため、不足すると疲れやすく、筋肉や神経の機能が阻害される。B1の適量の摂取は、アルコールの害を防いだり、神経系の不調を改善、知的能力を高めることになる。また、重金属の排出や乗り物酔いの緩和にも役立つ。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
脚気、ウェルニッケ脳症、食欲不振、足のしびれ、だるさ、疲労感、動悸、息切れ、むくみ、めまい、頭痛、嘔吐、下痢、先天異常 |
相乗作用を示す栄養素 | ビタミンB群 |
効果が期待される 症状、疾患 |
糖尿病、疲労、肩こり |
過剰症 | 単独の大量摂取はB2、B6の吸収を妨げる。 |
日本の推奨量 | 1.4mg |
米国の対症摂取量 | 25 - 300mg |
安全最大摂取量 | アメリカ:100mg 日本:設定なし |
多く含まれる食品 | 豚肉、うなぎの蒲焼、玄米ごはん、すっぽん、きな粉、栗、そば |
ビタミンB2(水溶性ビタミン)
名称 | ビタミンB2 Riboflavin リボフラビン |
体内での働き | たんぱく質と結合し、フラビン酵素としてTCA回路および電子伝達系において、エネルギー生産に関与する。 脂肪酸の合成、分解、たんぱく質の合成に関与する。過酸化脂質の分解をおこないビタミンEの抗酸化作用を助ける。細胞の再生を助け、皮膚や髪、爪、粘膜の生成を促進する。副腎皮質、甲状腺のホルモン生産に関与。免疫機能、抗体の生産に関与。ビタミンAと共に、目の健康を保つ。 |
解説 | B1同様、エネルギー生産に必須の栄養素。糖質、脂質の代謝に関わりが深く抗酸化性が高い。欠乏すると、髪、皮膚、粘膜のトラブルが起きやすくなり、目がごろごろしたり、口内炎が出来やすくなる。薬物や毒物の分解を助ける働きや、葉酸やビタミンB6など、他のビタミンの活性化にも一役買っている。また、視力を良くし目の疲れを改善する働きもある。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
角炎、口内炎、舌炎、脂漏性皮膚炎 |
相乗作用を示す栄養素 | ビタミンB群 |
効果が期待される 症状、疾患 |
動脈硬化症、口内炎 |
過剰症 | 1,000mg以上の摂取で暗色尿、吐き気、嘔吐の可能性がある。 |
日本の推奨量 | 1.6mg |
米国の対症摂取量 | 25 - 300mg |
安全最大摂取量 | アメリカ:200mg 日本:設定なし |
多く含まれる食品 | うなぎの蒲焼、レバー、かれい、牛乳、さば |
ビタミンB6(水溶性ビタミン)
名称 | ビタミンB6 Pyridoxine ピリドキシン |
体内での働き | 補酵素として、たんぱく質や脂肪の代謝を促す。また、グリコーゲンからブドウ糖への転換にも関与。DNA、RNAの合成に関わり、細胞増殖を正常にする。神経伝達物質の合成に関わり、脳神経機能を正常に働かせる。ヘモグロビンの合成や、血液の凝固に関与。有害なホモシスティンの生成を抑制し、心疾患のリスクを低下させる。抗体の合成に関わり、免疫機能を正常に保つ。 |
解説 | たんぱく質の代謝において、主要な働きを担い、脂質の代謝にも欠かせない。インシュリンやグルカゴンの合成にも関わっているため、糖尿病の場合には特に欠乏に注意が必要。他にも、アレルギーを軽くする、女性の生理前の不快感や、妊娠初期のつわりを軽くするなどの働きがある。不足すると、皮膚が脂性になり、湿疹や口内炎、フケが出やすくなる。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
アレルギー症状、神経障害、脂肪肝 |
相乗作用を示す栄養素 | ビタミンB群、マグネシウム、ビタミンC |
効果が期待される 症状、疾患 |
アトピー性皮膚炎 |
過剰症 | 200-300mgの長期摂取で神経障害の可能性がある。 |
日本の推奨量 | 1.4mg |
米国の対症摂取量 | 25 - 300mg |
安全最大摂取量 | アメリカ:100mg 日本:設定なし |
多く含まれる食品 | アジ、サケ、カジキ、フグ、カツオ、バナナ、玄米 |
ビタミンB12(水溶性ビタミン)
名称 | ビタミンB12 Cobalamin コバラミン |
体内での働き | 補酵素として、TCA回路においてエネルギー生産に関わる。葉酸とともに、赤血球の生産をおこなう。葉酸、B6と協力して、ホモシスティンの血中量を低下させ、心疾患のリスクを低減する。神経を保護するミエリン(脂質の鞘)を作る。鉄、パントテン酸の働きを助け、葉酸の再利用やコリンの生成を助ける。神経細胞内のたんぱく質や、脂質、核酸の合成や修復を助け、神経系を正常に働かせる。ベータ・カロテンの吸収とビタミンAへの転換を助ける。 |
解説 | 構造の中にコバルトを含む大きな分子。特徴的な赤い色を持つ。赤血球の生産に深く関わり悪性貧血を予防する。また、気分を落ち着け、記憶力や集中力を高める働きもある。脳や心臓がダメージを受けることを予防する働きを持つ。動物性の食物に多く含まれるため、菜食主義の場合、欠乏することが多い。また、高齢者では胃酸の分泌が悪いために、B12をうまく吸収できていない場合がある。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
貧血、出血性疾患、神経・精神障害 |
相乗作用を示す栄養素 | ビタミンB群、ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA |
効果が期待される 症状、疾患 |
貧血、出血性疾患、神経・精神障害 |
過剰症 | 知られていない |
日本の推奨量 | 2.4μg |
米国の対症摂取量 | 25 - 500μg |
安全最大摂取量 | アメリカ:3mg 日本:設定なし |
多く含まれる食品 | いくら、牛肉、アジ、牡蠣、アサリ、レバー、イワシ |
ナイアシン(水溶性ビタミン)
名称 | ナイアシン Niacin ニコチン酸、ニコチン酸アミド |
体内での働き | 体内でNAD(P)となり、酸化還元反応など500種近い酵素の補酵素として働き、糖質、脂質、たんぱく質の代謝に必須。特にエネルギー生産では、解糖系、TCA回路、電子伝達系の全てに関わっている。DNA修復、DNA合成、細胞の分化に関わっている。副腎皮質ホルモン、甲状腺ホルモン、インシュリン、性ホルモンの合成に関わっている。脳神経系の働きを正常に保つ。消化器の健康を維持し、胃液や胆汁の分泌を正常に保つ。血管拡張作用を持ち、血液循環を円滑にする。皮膚の機能を正常に保つ。 |
解説 | 糖質、たんぱく質、脂質の代謝に関わり、体内で必要なエネルギーの半分以上はナイアシンが関わって生産されている。また、遺伝子の合成、ホルモンの合成など、極めて多くの働きを担っている。体内で最も重要な抗酸化物質のひとつとして働く。体内でトリプトファンから合成されるため、欠乏症が現れにくいが、ナイアシンの重要性を考えると、摂取量には注意しておくべき。欠乏症として代表的なものは、ペラグラ皮膚炎(皮膚が赤くなったり、水泡ができたり、ひび割れてはがれるなど)。50mg以上のナイアシンの摂取により、一過性の副作用(皮膚が紅潮したり、痒くなる)が起きることがある。大量投与による精神疾患の改善や、コレステロールの低下が期待されている。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
ペラグラ、胃腸障害、精神障害、皮膚炎 |
相乗作用を示す栄養素 | ビタミンB群 |
効果が期待される 症状、疾患 |
糖尿病、疲労、冷え性 |
過剰症 | 50mg以上の摂取でフラッシュ(一時的な顔のほてり、チクチク感)が起こる。痛風の気のある人に痛風の発作を起こさせることがある。 |
日本の推奨量 | 15mg |
米国の対症摂取量 | 25 - 300mg |
安全最大摂取量 | アメリカ:500mg(ニコチン酸)1,500mg(ニコチン酸アミド) 日本:30mg(ニコチン酸)ニコチン酸アミドは設定なし |
多く含まれる食品 | イワシ、タラコ、かつお、ぶり、さば、サンマ、マグロ、レバー |
葉酸(水溶性ビタミン)
名称 | 葉酸 Folic acid プテロイルグルタミン酸 |
体内での働き | 体内で、メチル基、メチレン基などの受容体や提供体となり、それらの転移に関わる。約20種類の酵素の補酵素として働き、たんぱく質と核酸の合成に関わる。 遺伝子の複製、修復、細胞分裂時の染色体の破損防止等に働く。ヘムの合成に関わり、赤血球の形成を支えている。アミノ酸の代謝、抗体の生産に関わっている。神経細胞の代謝、成長を助け、脳内の神経伝達物質の生産を促す。 |
解説 | 細胞の分裂や成長に欠かせない働きを担当しているので、特に妊娠中や授乳中の女性には欠かせない栄養素。特に妊娠初期に不足すると、胎児の脳神経に障害が出るリスクが高まるので、妊娠の可能性がある女性は摂取を心がけるべき。消化器系の健康、肝臓の働きを助け、皮膚の健康を保ってくれる。 ビタミンB12と協力し、赤血球生産に関わるため、貧血の場合には鉄と合わせて摂取するのが望ましい。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
貧血、出血性疾患、腸炎、口内炎 |
相乗作用を示す栄養素 | ビタミンB群 |
効果が期待される 症状、疾患 |
貧血、出血性疾患 |
過剰症 | 5-10mg以上の摂取で乳がんと前立腺癌のリスク増加の心配がある。 |
日本の推奨量 | 240μg |
米国の対症摂取量 | 400 - 1200μg |
安全最大摂取量 | アメリカ:1mg 日本:1mg |
多く含まれる食品 | レバー、パッションフルーツ、うに、枝豆、とうもろこし、オレンジ、モロヘイヤ、ニラ、ドリアン |
パントテン酸(水溶性ビタミン)
名称 | パントテン酸 Pantothenic acid |
体内での働き | 補酵素A(CoA)の構成成分となり、エネルギー生産、タンパク質、脂質の代謝に深く関わっている。副腎を刺激して、ホルモンの生産を促すことで、ストレスに対する抵抗力を生み出す。免疫抗体の生産に働き、免疫力を強化する。解毒に働き、薬の副作用を軽くする。神経伝達物質の生産に関わる。結合組織、粘膜組織、ヒアルロン酸の生産に関わる。 |
解説 | ストレスへの抵抗力をつけるビタミンとして有名。疲れやすい、ストレスが溜まりやすいという自覚がある場合、ビタミンC、Eと合わせて摂取するのが望ましい。アルコールやカフェインによって消耗するので注意。エネルギー生産全般に関わるほか、髪や肌の健康を維持する働きを持ち、善玉コレステロールを増やす働きも持つ。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
手足のしびれ、睡眠障害、めまい、疲労、食欲不振 |
相乗作用を示す栄養素 | ビタミンB群 |
効果が期待される 症状、疾患 |
白髪、抜け毛、肥満 |
過剰症 | 10-20gの摂取で下痢、むくみが起こることがある。 |
日本の推奨量 | 6mg(目安量) |
米国の対症摂取量 | 25 - 500mg |
安全最大摂取量 | アメリカ:1,000mg 日本:設定なし |
多く含まれる食品 | レバー、かれい、いくら、たらこ、にじます、チーズ、アボカド、キャビア、フォアグラ |
ビオチン(水溶性ビタミン)
名称 | ビオチン Biotin |
体内での働き | 4種類の酵素の補酵素として働き、糖質、タンパク質、脂質の代謝に関わり、脂肪酸やアミノ酸の合成にも一役買っている。葉酸、パントテン酸、ビタミンB12の働きを助ける。骨、皮膚、神経組織、血球、髪の健康維持に関与。 |
解説 | ビオチンは毛髪やお肌のビタミンと呼ばれ、白髪や脱毛を防ぎ、肌の健康を維持する働きがある。生卵の白身に吸着され吸収が阻害されるので注意が必要。ヒスタミンのもとを体外に排出する働きがあるため、アトピー性皮膚炎の症状の予防に役立つという説がある。また、手足に水泡が出来る掌蹠膿疱症(ショウセキノウホウショウ)は、ビオチン欠乏症という説がある。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
不眠症、貧血、皮膚炎、脱毛、白髪、疲労感、憂鬱感 |
相乗作用を示す栄養素 | ビタミンB群、ビタミンA |
効果が期待される 症状、疾患 |
アトピー性皮膚炎 |
過剰症 | 知られていない |
日本の推奨量 | 45μg(目安量) |
米国の対症摂取量 | 300μg |
安全最大摂取量 | アメリカ:2.5mg 日本:設定なし |
多く含まれる食品 | くるみ、ひまわり種子、レバー、牛乳、大豆、卵、カリフラワー、ピーナッツ、バナナ |
コリン(ビタミン様物質)
名称 | コリンCholine |
体内での働き | 細胞膜の構成成分である、レシチンを作り、神経細胞の細胞膜を形成する。セラミドの合成に関わる。脂質、コレステロールの生成に必要。神経伝達物質である、アセチルコリンの前駆物質である。ホモシスティンのメチオニンへの転換を促進する。 |
解説 | 体内で合成されるが、十分な量ではないので、食事による補給が望ましい。脂肪とコレステロールが体内で使われるのを助け、肝臓に脂肪が溜まり過ぎることを防ぐ。血管壁へのコレステロールの沈着を防ぎ、高血圧を予防する。記憶力や学習能力を高め、神経系の障害を防ぐ。うつ状態を予防、改善し、思考を助ける。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
肝硬変、脂肪による肝臓の変性、動脈硬化、アルツハイマー |
相乗作用を示す栄養素 | イノシトール、ビタミンB12、葉酸、L-カルニチン |
効果が期待される 症状、疾患 |
記憶力や学習能力を高め、神経系の障害を防ぐ。解毒を助ける。冠動脈疾患を防ぐ。肝障害を予防する。抗ウイルス作用。アドレナリンの合成を高める。 |
過剰症 | 知られていない |
日本の推奨量 | 設定なし |
米国の対症摂取量 | - |
安全最大摂取量 | - |
多く含まれる食品 | 卵黄、緑黄色野菜、酵母、レバー、小麦胚芽、大豆 |
イノシトール(ビタミン様物質)
名称 | イノシトール Inositol |
体内での働き | リン脂質の成分として、細胞膜を構成する。コリンと共にレシチンを構成し脂肪の分解とコレステロールの低下に働く。ミエリン鞘の形成に関わり、脳神経に栄養を供給し正常に働くようにする。コリン、メチオニンと共同して、動脈壁や肝臓への脂肪蓄積を防ぎ、エストロゲンの濃度を調節する。 |
解説 | 体内で合成されるが、十分な量ではないので、食事による補給が望まれる。ビタミンB群と協力して、脱毛の予防に役立つ。神経や、皮膚の健康維持に役立つ。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
湿疹・脱毛、便秘、胃腸が弱る、不眠、神経障害、脂肪肝、高血圧、動脈硬化、コレステロール増加 |
相乗作用を示す栄養素 | コリン、ビタミンB群 |
効果が期待される 症状、疾患 |
うつ、不安、コレステロール低下、パニック症候群、多発性硬化症、糖尿病の神経障害、湿疹 |
過剰症 | 知られていない |
日本の推奨量 | 設定なし |
米国の対症摂取量 | - |
安全最大摂取量 | - |
多く含まれる食品 | オレンジ、メロン、ジャガイモ、レバー、ビール酵母、小麦胚芽、ピーナッツ、キャベツ |
CoQ-10(ビタミン様物質)
名称 | CoQ-10 ユビキノン Ubiquinone |
体内での働き | ミトコンドリアにおいて、ビタミンB群と共同して働き、エネルギー生産に関わる。特に、エネルギーの需要が高い、心臓、肺、肝臓、腎臓、免疫細胞などに多く分布している。脂溶性の抗酸化物質として、LDLなど脂質の過酸化を防ぎ、細胞膜などを保護する。また、酸化されたビタミンEのリサイクルをおこなう。免疫系を刺激して、抗体の生産を促す。補酵素Q、コエンザイムQ10(キューテン)、ビタミンQ、CoQ10、ユビデカレノンなどの別名がある。 |
解説 | 心臓のエネルギー生産を高めるので、狭心症や冠動脈疾患への対策として用いられる。また、筋力を高め、運動能力を向上する。血圧の低下作用を持つ。代謝効率を高めるので、ダイエットに効果を発揮する。また、インシュリンの合成と分泌を促進する作用により、糖尿病対策に有効。歯茎の炎症を改善し、歯槽膿漏に効果がある。ガンの治療に有効という報告がある。 |
不足すると起きやすい 症状、疾患 |
疲れ、息切れ、高血圧、不整脈、心臓が弱る、歯茎が弱る |
相乗作用を示す栄養素 | ビタミンC、ビタミンE、リポ酸 |
効果が期待される 症状、疾患 |
抗酸化作用、心筋梗塞、老化抑制、不整脈、アルツハイマー、慢性疲労、コレステロール、高血圧、歯槽膿漏 |
過剰症 | 疲労、吐き気が出る場合がある。 |
日本の推奨量 | 設定なし |
米国の対症摂取量 | - |
安全最大摂取量 | - |
多く含まれる食品 | 牛肉、鶏肉、大豆、鰯、アジ、サバ、鰻、ピーナッツ |
参考
- 東海四県薬剤師サイト「TOP/NET」
- 医薬品と飲食物・サプリメントの相互作用とそのマネージメント フジメディカル出版
- 日本人の食事摂取基準(2005年版:18歳~19歳男性)
- Vitamin and Mineral Safety 2nd Edition 2004 : CRN's Upper Level for Supplements : CRN(米国栄養評議会)
- サプリメントガイド 佐藤 章夫