B型肝炎とC型肝炎
ウイルスが原因の肝炎は、ABCDEの5種類の肝炎が確認されています。この中でB型肝炎(HB)ウイルスとC型肝炎(HC)ウイルスが特に注目されるのは、いずれも血液、体液を介して感染し、慢性の経過をとり、慢性肝炎から肝硬変、そして肝臓病の終着駅とも考えられる肝細胞がんを引き起こす可能性を持っているからです。30年ほど前には、なかなか良い治療法が無く、死に至る疾患と恐れられていたウイルス性肝炎ですが、近年治療薬の発展は目覚ましいものがありました。内服薬のみの服用で肝炎鎮静化し、進展を抑えることができるようになったからです。
静岡県では肝疾患で亡くなられた方が、2010年は1,300人強、2016年には1,100人、2022年911人と確実に減少していますが、大半の95%の人は肝細胞がんと肝硬変で亡くなられています。
まずはC型肝炎(HC)です。HCウイルスはRNAウイルスです。一本鎖の遺伝子です。この遺伝子の一部を攻撃してウイルスの増殖を抑える薬が開発されました。現在は遺伝子の異なる部位を攻撃する薬を組み合わせた薬、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)を8週間から12週間内服することで、慢性肝炎だけでなく、かなり重症の肝硬変の患者さんにも使用され、HCウイルスを完全に駆除が可能になりました。HCウイルスがいた時の年間の肝発がん率は約10%でした。HCウイルスが陰性化したのちも年間0.6%の発がんが見られるという報告もあり、HCウイルスが消失し治癒の診断後も定期の検診が必要です。
一方でB型肝炎はというと、ちょっと事情は異なります。HBウイルスは二本鎖の遺伝子が絡まりあったDNAウイルスという、より複雑な構造から構成されています。そのため現在でもHBウイルスを駆除することはできません。それでも母子感染を防ぐための乳幼児期や医療従事者に対するHBワクチン接種でウイルス感染を防ぐことができるようになりました。またHB肝炎患者に対しては、核酸アナログ製剤という飲み薬が使用され、HBウイルスの増殖を抑えることで病気の進行を止め、肝細胞がんの発生を大幅に抑えることができるようになりました。欠点としては一生飲み続ける必要と、高価であるということがあります。
いま日本では、公費からの助成があり費用については心配ありません。家族、親戚に肝炎で治療中の方、亡くなられた方がおられる方は、一度血液検査を是非受けていただき、HBウイルスキャリアでないことを確認してください。キャリアというのは全く無症状でありながら、血液検査でウイルスが陽性という場合です。過去に感染歴があり、今は抗体のみが認められ治癒したと考えられる状態の方もいます。この方が他の疾患で抗がん剤治療や免疫抑制治療を受けられた時の肝炎発症は年間20%ほど認められています。劇症化して死の転帰をとることもあります。特に注意が必要な肝炎ということで de novo肝炎と呼ばれています。また肝細胞がんの発症率も少ないながら認められています。現在症状のないキャリアの方を見出し、必要あれば治療を行い、早期に癌を発見し、次代への感染を防ぎ、天然痘や日本脳炎のように国内から肝炎ウイルスの撲滅を図りたいものです。WHOも2030年のウイルス肝炎撲滅を目指して活動している現状です。
【参考】
- 1)令和5年度静岡県肝炎医療コーディネーター養成研修会資料集
- 2)日本臨床内科医会会誌Vol40 21-29,202
国立病院機構高崎総合医療センター 柿崎暁 - 3)日本臨床内科医会「かかりつけ医のためのWEB講座」
1,2024.7.30 佐賀医科大学 高橋宏和教授
2,2024.10.23 武蔵野赤十字病院院長 黒崎雅之院長
3,2025.3.27 佐賀医科大学 高橋宏和教授
4,2025.7.30 金沢大学 山下太郎教授 - 4)最新医学Vol69 1848-1853 広島大学 兵庫秀幸講師他

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